不妊治療アドバイスブックでは、不妊治療をお考えの方にあてて、当院長が不妊治療に関する技術や考え方などの情報をお伝えしていきます。
不育症 習慣流産 プロテインS欠乏症 (Protein S) 2014.07.03更新
不育症や習慣流産で悩まれる方が少なからずおられます。
今回は、プロテインSについて考えてみたいと思います。
先天的にプロテインSという血栓を予防する物質が減少している人は血栓症を起こしやすく、
抗リン脂質抗体症候群と同じように流産を起こしやすいと考えられてきました。
こういった方を
先天性プロテインS欠乏症
と診断することがあります。
最近分かってきたことは、プロテインS欠乏症には、
抗リン脂質抗体症候群が関与しているということです。
具体的には、抗リン脂質抗体症候群の方は、プロテインSが欠乏することが多いのです。
ちなみに、抗リン脂質抗体が初期流産にも関与するのは血栓では無いということもわかってきています。
絨毛細胞(胎盤のもとになる細胞)の増殖や脱落幕膜への浸潤を阻害するからと考えられています。
最近の不育症に関する多数の報告によれば、
プロテインSについては、低下群も正常群もその後の流産率に差を認めていません。
そのため妊娠10週未満などの妊娠初期の反復流産について、
プロテインSは関係ないと考えられています。
もう一度言いますが、プロテインSは、抗リン脂質抗体症候群の方は低下します。
抗リン脂質抗体症候群の自己抗体がプロテインSの低下を引き起こしているのだと考えられます。
抗リン脂質抗体症候群ではない方がプロテインSが低下していても流産率には差がないのは、自己抗体が無いからです。
「プロテインSが低下している症例では、無治療よりも低用量アスピリンもしくは低用量アスピリン+ヘパリン療法を行った方が妊娠継続率が高い」
という報告もありますが、この報告の中には抗リン脂質抗体症候群の方も含まれていると考えられています。
抗リン脂質抗体症候群であるか否かをしっかり診断基準に沿って行うことが、低用量アスピリンやヘパリン療法といった抗凝固療法の有効性に関与します。
当院では、不育症や習慣流産の原因を探求し、それに必要な治療を適切に行っています。
一般不妊治療費補助事業のご案内(人工授精) 2014.04.01更新
当院では、
体外受精等で培ってきた技術により、
精子の受精能力を最大限まで引き上げてから
人工授精を行うことが可能です。
また、子宮内膜を傷つけない精子注入法も
独自に開発しております。
また、ご希望される方に超高倍率観察(IMSI)下に精子の形態を確認いたします。
IMSI(Intracytoplasmic morphologically selected sperm injection)専用顕微鏡
この顕微鏡は、微分干渉による光学レンズとデジタル機能を組み合わせて精子を
最大10000倍まで拡大して観察することが可能な顕微鏡です。
精子を詳細な部分まで観察することにより、御主人の精子の様子や今後の治療プランが立てやすくなります。
尚、この顕微鏡はオリンパス社の協力にて静岡県内ではじめて当院に導入しております。
人工授精における
周期あたりの妊娠率は通常5~8%程度ですが、
当院の人工授精では、この精子洗浄方法と精子注入法により、
周期あたりの妊娠率は15%以上となっています。
エストラジオールゲル ディビゲル ル・エストロジェル ホルモン補充周期 2014.03.12更新
最近、ホルモン補充周期での胚移植で
エストラジオールゲル(ディビゲル ル・エストロジェル)
を使用する方が増えています。
従来は、経口エストラジオール(ジュリナ)を使用していましたが、
FSHの基礎値が高い人は、卵胞が発育してホルモン補充周期が
できなくなってしまう周期がありました。
こういった方に、
ディビゲル等のエストラジオールゲル単独や
ジュリナを併用することにより、
卵胞発育を抑制し、
適切なホルモン値をキープできるようになりました。
理由は、経皮的なエストラジオール(エストロゲン)の吸収が、
下垂体等にフィードバックしやするくなるからだと考えています。
尚、患者様より、
「エストラジオール貼付剤は使わないのですか?」
という質問があります。
アクトタワークリニックでは、
エストラジオール貼付剤の使用はありません。
理由は、
① 貼っている部分が赤くなったり、かゆくなる。
② はがすときに痛い。
③ お風呂に入ってはがれると、気になってしまう。
④ ホルモン値が安定しない。
などがあるからです。
①~③は我慢できたとしても、
問題なのは、④です。
ホルモン補充周期での胚移植では、安定したホルモン値が、
妊娠率・着床率を向上させるポイントだと考えています。
そうはいっても、ホルモン補充周期で排卵する人は少なからずいます。
排卵した場合は、ホルモン値をしっかり把握しながら
投薬量を調整して胚移植すれば、大丈夫ですので安心してください。
精子はどうやって卵管の先端(卵管采)まで到達するのか? 2013.03.06更新
卵子は、卵管采で取り込まれ、
卵管采もしくは卵管膨大部周囲にて受精すると考えられています。
では、精子は、どうやって卵管采の位置を知り、
卵管采まで到達して
卵子と出会うのか、
化学物質に誘引されるのか、卵管内の線毛の動きなのか・・・
長い間、研究者の方々が議論をしていましたが、
最近の研究で、以下のことがわかってきました。
卵管には、液体が流れています。
その流れは、卵管采から子宮の方向へ
流れているようです。
その流れを精子は認識します。
そして、その流れに逆らうように、精子は移動するようです。
精子が卵管采の方向と位置を知るのには、
Rheotaxis(走流性)と呼ばれるものが関与しているようです。
AMH 体外受精 不妊治療 HCG 2013.02.26更新
最近、テレビ・マスコミでも
AMH(アンチミュラー管ホルモン)
について報道があります。
AMHが低い方は、
早めに治療を開始したほうがいいことは事実ですが、
AMHが低い=妊娠しにくい
のでしょうか?
AMHが低くても、
卵巣には、数万~数十万もの原始卵胞が
残っています。
私は、AMHが低くても、
これらの残っている卵子を、
うまく獲得(採卵)できれば
体外受精/顕微授精の技術で
不妊症は克服できると考えています。
それは、たとえば、
クロミフェン周期であれば、
クロミフェンを繰り返し服用するだけでなく、
何日服用するのか、
1日服用量をどの程度にするのか、
服用時期いつからにするのか
クロミフェン以外の薬のほうがいいのか
ホルモン値は周期ごとに変わるので、
治療法も周期ごとによって変える必要があります。
また、AMHが低い方に半減期(体内に残存している期間)
が長期間になるHCGを投与してしまうと、
卵巣に残っている
卵子の生育能力・受精能力・分割能力を
著しく阻害してしまいます。
HCGを使用せずに、良好な卵子が獲得できる
当院での体外受精はAMHが低い方でも妊娠が可能となる
治療法です。
ヒューナーテストと人工授精 2013.02.14更新
ヒューナーテストをせずに、
人工授精を繰り返して
妊娠できなかった方が、
当院に来られることがあります。
この方々の、ヒューナーテストを当院で行うと、
95%の方が良好という結果です。
ヒューナーテストが良好な方は、
人工授精で妊娠するのは困難なのです。
ですから、人工授精を行う前に、
ヒューナーテストを行うことをお勧めいたします。